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老人ホームと洪水から見るリスクへの感度について

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私は仕事柄、市内各所を巡回しているのですが、どうしてこんなところに老人ホームを建設するのか、ちょっとした憤りすら感じることがあります。

皆さんも毎年のように洪水が起きては、老人ホームの入所者が多数死亡する報道に接しますよね?
なんで、あんなことばかり起きるのか、不思議に思う方もいると思いますが、老人ホームの特性を考えると、それも至極当然なのです。

老人ホームの特徴

市内各所を巡回して老人ホームをみると、ある特徴に気づきます。それは「平屋」であること。もちろん、2階建て以上の施設もありますが、平屋率が高いのです。しかも、都心から遠ければ遠いほど平屋である確率が高いのです。
そして、老人ホームの立地場所が、郊外の土地の安いところ、すなわち河川沿いの海抜の低い地域に多いのです。
酷いところだと、支川の水流をポンプアップして本川に流し込むような、いわゆる「中洲」に似た場所に老人ホームを建設しているところすらあります。

2つの要素が噛みあうと

もうお分かりですよね。
そう、老人ホームの立地上、洪水のリスクが比較的高く、しかも平屋であるため施設内のどこへも避難出来ないのです。
まして入所者は高齢者ですから、職員がいくら頑張っても避難させるのは困難です。
その結果、一度に多くの高齢者が亡くなるのです。

高齢者の「長年」の経験

以上のことは、誰でも少し考えればわかるのです。しかし多くの人、特に高齢者は自分の「長年」の経験に事実を当てはめる傾向にあります。
以前、私はそのような地域に住んでいる高齢者に、洪水のリスクについてお話しする機会があったのですが、その方曰く「80年ここに住んでいるけど、洪水なんて起きたことないし、大丈夫だべ」と、朴訥に語っているのを覚えています。
人は歳を重ねると、自分の経験を事実として咀嚼する傾向にあり、自分の経験の中でしか日常が動かないように思ってしまいます。
でも、人間の経験なんてせいぜい80年、90年です。地球の長い歴史から見ると、ほんの一瞬でしかありません。ましてや、一級河川の計画降雨量なんて100年程度にしか設定されていません。
したがって、その地域に100年も住んでいれば、相当な確率で洪水を起きる可能性を示しているのです。
浸水地域に住んでいて、今まで洪水がなかったのは、たんに「運」が良かったに過ぎないのです。

まとめ

確かに、都心のゴミゴミしたところで余生を過ごすよりも、平屋で景観のいい場所で暮らしたいのは当然の欲求だと思います。
また、残りの人生について、何を優先して生きるのかは人それぞれの価値観に委ねられるものだと思います。
しかし、自分の経験のみに頼ってものごとを決めると、思わぬリスクを背負うことにもなりかねません。
自分の経験ほどあてにならないものはないのです。
以上、土木屋のたわごとでした。

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